こんにちは。
スタディクーポン・イニシアティブの今井悠介です。
渋谷区の子どもたちにクーポンを提供してから、9か月が経とうとしています。
皆さまからのご支援のおかげで、現在、クーポン利用者の子どもたちは、年明けの受験に向かって思い思いに学習を進めることができています。本当にありがとうございます。
今回、岩田千亜紀先生(東洋大学社会学部社会福祉学科/助教)による「渋谷スタディクーポン事業 中間評価報告書」が公開されましたので、内容のダイジェストをご紹介します。
なお、本報告書では、区との連携により支援ニーズの高い子どもたちにリーチできたこと、クーポンを利用した子どもたちの学校外での平均学習時間が増加したことや、学習に対して前向きになった子どもが増えた点などを高く評価していただいています。ぜひご覧ください。
(1)事業の概要
まず、渋谷スタディクーポン事業の概要と、スタディクーポンの仕組みについて説明されています。
次に、渋谷スタディクーポン事業のロジックモデル(※)と、今回の中間評価の範囲について示されています。
※ロジックモデルとは・・・ある施策がその目的を達成するに至るまでの論理的な因果関係を明示したもの
また、本事業全体のスケジュールおよび今回の中間報告書の位置づけが示されています。
(2)中間評価の概要
次に、今回の中間評価の概要(目的など)について説明されています。
今回の中間評価の評価項目は、ロジックモデルの4つの評価項目に加え、「ニーズへの適切性」の5つとなっています。
(2)中間評価結果
今回の中間評価の結果概要としては、①ニーズへの適切性の高さ、②アウトプット(クーポン利用者数・捕捉率等)の達成度の高さ、③中期アウトカム(学習習慣・学習意欲等)の改善の3点が示されています。
また、中間評価結果を踏まえた総合評価としては、「今後もスタディクーポンを通じた教育支援を継続するべきである」と述べられています。
(4)中間評価結果の詳細
①ニーズへの適切性
次は、中間評価結果の詳細について説明しています。
1つ目の評価ポイントは、子ども・保護者のニーズに対して的確に対応できているという点です。調査では、子どもの学校外教育費に困っている保護者が最も多いことが分かりました。
また、子どもや保護者からの事業への希望や期待をヒアリングしたところ、事業の継続実施など、事業に対するニーズや期待が非常に高いことが明らかになりました。
さらに、家庭・利用者の状況としては、ひとり親世帯や多子世帯が多く、支援ニーズの高い子どもたちにリーチできていることが分かりました。
②アウトプットの達成状況
2つめの評価ポイントは、アウトプットが高い精度で達成されているということです。
特に生活保護世帯の捕捉率(生活保護世帯の子どものうち、スタディクーポンに申し込んだ子どもの割合)が高いという点が評価されています。
③短期アウトカムの達成状況
次に、短期アウトカムの達成状況が確認されました。
7月末時点で8割以上の子どもがクーポンの利用を開始し、多くの子どもが通塾を開始したり、通塾頻度を増やしたりしたことが分かりました。
また、学習習慣の観点でも、クーポン利用前後で一週間の学習時間が44.9%伸びたことが明らかになりました。
さらに、子どもの学習意欲についても、76.8%の子どもたちにおいて、向上していることが分かりました。
(5)クーポン利用者・保護者の声
次に、定性的な情報として、実際にクーポン利用者や保護者の方から寄せられた声が紹介されています。
(6)提言・教訓
最後に、本事業の成功要因として、①スティグマへの配慮があったこと、②学校や福祉課と連携したこと、③大学生ボランティアによる利用者へのケアの3点があげられています。
他方、今後検討すべき事項としては、①区内の部署間や区・運営事務局間の連携強化、②多様な問題を抱えた家族への更なるケアの展開、③事業の対象学年の検討の3つが挙げられています。
参考資料(スタディクーポンの先行研究)
参考までに、東北で先行実施されているスタディクーポン事業に関する調査結果では、クーポン利用者の学力が有意に上昇したことが紹介されています。
以上、今回の中間評価報告書のダイジェスト版をご紹介しました。報告書は7月末時点の情報となりますが、8月以降も着実に事業を進め、現在はクーポン利用者54名全員がクーポンを利用し始めて学習に取り組んでいます。
なお、最終調査は、2019年4月ごろに実施し、その後、最終報告書が作成される予定です。ご支援いただいた皆さまには改めて内容を報告させていただきますので、引き続き、温かく活動を見守っていただけますと幸いです。
受験生にとって最も大切な冬の季節。子どもたちが希望の進路をかなえられるよう、スタッフ一同、これからも子どもたちのサポートに全力を尽くしていきます。引き続き、よろしくお願いいたします。