スタディクーポン・イニシアティブ

経済的な理由で塾に通えない高校受験生にスタディクーポンを届ける「スタディクーポン・イニシアティブ」のブログです。

「学校外教育がライフラインになっている子どもたち」を世界中で見てきた|安田菜津紀

みんなの力で教育格差をなくそうというコンセプトを掲げるスタディクーポン・イニシアティブ。今回はフォトジャーナリストの安田菜津紀さんにお話を伺いました。

 

【話を聞いた人】
安田菜津紀 フォトジャーナリスト

f:id:studycoupon:20171006204656j:plain1987年神奈川県生まれ。studio AFTERMODE所属フォトジャーナリスト。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、カンボジアを中心に、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で貧困や災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。2012年、「HIVと共に生まれる -ウガンダのエイズ孤児たち-」で第8回名取洋之助写真賞受賞。写真絵本に『それでも、海へ 陸前高田に生きる』(ポプラ社)、著書に『君とまた、あの場所へ シリア難民の明日』(新潮社)。上智大学卒。

 

ーーー安田さん、今日はよろしくお願いします。ご自身の経験や、世界で出会って来た子どもたちについて、ぜひお話をお聞かせください。

はい!こちらこそよろしくお願いします。

 

母子家庭で母親がガンに。大学受験を諦める寸前だった

ーーー早速ですが、ご自身の受験や塾にまつわるお話からお願いします。

はい。私は中高一貫校だったので、中学と大学で受験をしたのですが、特に大学受験の時は塾に通っていました。

私の家は母子家庭で、高校生のときに母がガンを患っていたということもあって、そもそも大学受験ができるかどうかという瀬戸際でした。塾に通うのもかなりハードルが高かったので、学力を考慮して受講料を減額してくれるシステムがある塾に通っていたんです。その塾では学力面だけでなく、精神面でもかなり支えてもらったなと感じています。

ーーー精神面での支えというのは、どういうところで感じていたのでしょうか?

母が病気だったのもありますし、仕事をしていたということもありました。妹もいましたし、慌ただしい家で勉強に集中するのはやっぱり難しかったんですね。学校は学校でずっと留まって勉強できる環境でもなかったので、まず学ぶことに集中できる場所があるということが良かったと思います。

あと、塾にはチューターさんがいて、いろいろとサポートをしてくれたので、見守ってくれる人が家族や学校以外にいるということが精神的にも大きかったですね。

ちゃんと自分を見てくれる人がいるから頑張れたというのがあります。

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身を削る母親に「受けたい授業を増やしたい」とは言い出せなかった

ーーー塾に通うのは金銭的な面でハードルが高かったのでしょうか?

そうですね。最悪、自分で勉強するか、そもそも受験自体やめちゃおうかとも思ってもいました。でも、母親が何より教育に支出をするということにこだわっていた人間だったので、受験することを強く推してくれました。

ただ、母親が身を削ってくれているというのも見ていてわかっていたので、これ以上「受けたい授業を増やしたい」とは言い出せなかったですね。本当は受けたい授業は他にもいっぱいあって、友達が受けているのを見て羨ましく思っていなかったわけではないのですが...

ーーーそうだったんですね。その後上智大学に進学されましたが、なぜ上智大学を志望されたのですか?

上智大学には学費免除の制度があって、私も半分減額してもらうことができました。成績はもちろん見られるんですけど、家庭の事情もかなり考慮してくれました。

実はその情報も塾のチューターさんが調べてきてくれて知ったんです。学校の先生たちもいろいろ調べてはくれるけど、塾の方々は最新の情報に最前線で触れているので、すぐに情報を取ってきてくれました。

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他の大学にはない学費減額の制度だったり、自分のやりたい方向性とも合っているというところから、上智大学を目指して勉強しました。

ーーー塾のチューターさんに教えてもらってから、となると勉強のスケジュールは結構ギリギリでしたか?

追い込みな感じではありましたね。それまで、そもそも受験するのか、しないのかという状態だったので、学校についてリサーチをするモチベーションというのも上がっていかなかったんです。上智大学について教えてもらって、この大学だったら経済的にも道が開けると思ったのが最後の夏休み明けくらい。そこから「うぉーー」っと思って勉強頑張りました。

 

学校外教育がライフラインになっている子どもたち

ーーーこれまで海外や日本の様々な子どもたちと出会ってこられたと思うのですが、学校外の教育という視点で感じられていることがあればぜひ教えてください。

「学校外教育がライフラインになっている子どもたち」を世界でたくさん見てきました。

例えば、ドイツに行ったときに出会ったシリア人の友人は、お子さんたちが学校の勉強に追いつけなくて学校外教育を利用していました。ドイツ語が話せないことや、戦争によってハンデがあって1、2年間学校に通えていなかったので、学校外教育が生きる術を得る手段でもあったんですね。

「自分がここで頑張れば、学校で勉強についていける」という、ある意味、塾というのが階段をかけてくれるような存在だったのではないかと思いますね。あそこまで届くには高い壁に見えるけど、でも塾によってハシゴができたっていう感覚が彼らにはあるんじゃないかなと思います。

ーー例えば集団授業で周りについていけなかったりと、日本でも同じような状況がありますよね。

そうですね。「自分にこの壁は登れないな」と思ってしまったときに、モチベーションって下がっていくと思うんです。

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シリア難民の子たちなんかは、1年2年勉強に遅れをとっていて、じゃあその子たちのレベルに合わせたクラスに入ればいいじゃないかとも言えますけど、周りは自分より年下で恥ずかしいと思ってしまう部分もある。それって日本でも言える事だと思います。

学力のはしごを丁寧にかけていくということももちろんですし、出会いの場だったというのも大きいと思うんですけど、やっぱり学校以外の居場所をどれくらい作れるかというのが大きいと思うんです。

日本は教室というすごく特殊な制度があって、逃げ場がなくて、教室の中で物差しを一義的に決められて、そこから機械的に評価をされる。だからこそ学校外教育によって心のレイヤーが増えていくことがすごく大事で、生きづらさを少しずつ溶かしていく足がかりが築けるかもしれない。

逃げ場とかではなくて、積極的な意味で「自分が自分でいられる場所」を見つけるチャンスにもなるんじゃないかなと思います。

 

クーポンの裏側にはたくさんの応援団がいる

ーーー安田さんは以前からチャンス・フォー・チルドレンでクーポンを使っている子たちと実際に出会われたんですよね。

はい、いろいろお話をさせていただきました。

経済的に厳しい環境で生きている子たちってどうしても孤独になりがちで、自分の力でなんとかしなきゃとか、誰にも迷惑をかけてはいけないと思ってしまう。

でも、クーポンという制度を使うことによって、もちろん経済的に支えられるっていうのもあるんですけど、クーポンを使っていた子の話を聞いていると、自分の家族とか、学校以外に自分のことを見ててくれる大人がいる、感謝を返したいと思える人がいる、というところが、すごく本人のモチベーションに繋がっているのではないかと思いました。

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安田さんがナビゲーターを務めるJ-WAVE「JAM THE WORLD」にて

実際にこれからスタディクーポンを使う子たちには、実はクーポンの裏側には事務局の人たちだけじゃなくて、たくさんの大人たちがあなたを応援しているんだよ、私たちも応援団なんだよ!ということがクーポンと同時に伝わると良いなと私は思っています。

 

企画・執筆

望月優大・松岡宗嗣(SmartNews ATLAS Program)

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スマートニュースの社会貢献チーム。SmartNews ATLAS Programではこれまで「子どもが平等に夢見れる社会を残そう」をコンセプトに、子ども領域の非営利団体の情報発信を支援。今回スタディクーポン・イニシアティブにもサポーターとして参画し、プロジェクト全体のデザインや情報発信の側面から支援を行っている。
望月優大 Twitter Facebook / 松岡宗嗣 Twitter Facebook

 

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